楽器演奏のことだけ考えれば,なるべく小さい装置,あるいは取り外しができる装置などが望ましいということになります。
しかし,取り外しができる装置は,歯を抜く治療には向いていませんし,細かい歯のコントロールも難しくなります。 矯正装置にカバーをつけて,唇への当たりを柔らかくする方法もありますが,歯の移動が遅くなったり,つけている時といない時の感覚の違いが気になる場合もあります。
裏側矯正の場合は,装置による唇への影響を少なくすることができますが、表側矯正に比べて舌への影響が出てきます。個人差はありますが,タンギング(舌の動きにより音を切る)などがやりにくく感じるかもしれません。
シングルリード楽器の場合,理論的には上顎に表側装置、下顎に裏側装置をつけることで演奏への影響を少なくできると考えられますが,通常の治療ではほとんど選択されない装置の組み合わせになります。
治療期間については、例えばシングルリードの楽器では、マウスピースから前歯に直接力がかかるため、上の前歯を後方に移動することが難しく、下の前歯は内側に倒れやすくなるため治療期間が延びることが考えられます。さらに、管楽器演奏中は口の中が狭くなるために矯正装置除去後のリテーナー(動かした歯を抑えておく装置)の使用が難しいため、保定期間(おさえておく期間)も長くなることが考えられます。